あんなやつにだまされました

数年前、結婚相談所に入会し初めて紹介された人と半年で成婚退会。入籍して3ヶ月弱、同居して2ヶ月弱で離婚。まんまとだまされました。

粗大ゴミ男との話し合い⑦

私達は、まわりのお客さんの好奇心に圧倒され、席を移動した。

しかし、やつに対しては効果的な場所だった。人目を異常に気にするので、やつのペースに持っていけないのだ。そして、もしも、逆上したりした時の場合に備えて人目は必要だった。


母親が見つけた4階の端には、ちょっとしたスペースのような、すりガラスで隙間はあるが囲われたような空間に二人がけが3セット置いてあった。1セットは、若い男子学生がパソコンを開いて座っていた。

私達は、そこの残り2セットをくっつけて座った。

私が、「離婚届に署名して。」と、テーブルに置いた。


男子学生が思わずこちらを見た。ただならぬ雰囲気を察知したようで、申し訳なかったが、ここは、押し切るしかない!と思い、

「サインだけでいいから!」「早く、もう無理なんで、モタモタしたり、時間をかけても仕方ないじゃん!」「なんなの?時間稼ぎする意味ある?あの日、フォトウェディングの衣装合わせの日に、私にした仕打ちを覚えてる?

無視し続けて、挙げ句に、真夜中にあの道を一人で歩いて駅まで行ったんだよ!もし、次の日の夜に、あなたが、父親にラインしてくるまで父親が知らなくて、私がその間に事故や事件に巻き込まれてても良かったんじゃん?どうするつもりもなくて、普通に、仕事に行き、その時、やりたかった食べ放題を同僚や後輩と行ってたんじゃん?信じられないよ!人間のすること?で、父親に私をお願い致しますみたいなことをラインで言いながら、食べ放題でやりたかったことを楽しんでたんじゃん!私をまる二日放置して、その間、食べたいものを食べたいだけ食べることしか考えてかなったんじゃん!」

「それで、あなたは、夫婦は助け合うとか言うけど、あなたが私にしてもらうことばかりじゃん!そんなの、無理です!嫌です。できません。」その後、私が結婚してからずっと食費もだし続けていることを重ねて話した。


やつは、イスを揺らしながら、「もうー。そうやってキャンキャン、キャンキャン言うから、ぼくの言い分が言えないじゃん。」と、言った。

私は、「じゃ、黙りますから、話して。」と、言った。


やつは、黙ったままだった。イライラした。やつには、言い分なんてないのだ。離婚が嫌なだけ、離婚する自分が嫌なだけなのだろう。自己愛性パーソナリティ障害だから。


隣の席の大学生がパソコンを片付けて席を離れた。ホントに申し訳なかったが、ここからは、確実に、離婚届にサインをさせるまで、声を抑えている場合では、なかった。


やつは、長い沈黙の後、こう言った。

「離婚は、できません。」


はぁ~?もう、キショくて気がおかしくなりそうだった。


そして、結婚相談所のキャッチフレーズが頭に浮かんだ。

「きちんとした方との出会いをご提供いたします。」

なんなの!?もう、こんな粗大ゴミ男を紹介して!

なんでこんな目にあうの?だまされた。こんなやつにだまされた。こんな、ゴミ男にだまされたんだ。

粗大ゴミ男との話し合い⑥

やつは、イスを揺らしたり、首をかしげたり、落ち着きなく店内を見回したり。黙り込んだり、ため息をついたり、急に睨んだりもした。

下出に出たような時もあれば、すごく馬鹿にしたように見下したような態度に出た。


ズボンに食い込んだ腹の脂肪が気になるときにはズボンのゴムに手を入れ、ゴムの位置を変えたりしていた。その度に、パチンと音がした。私はキモすぎて、吐き気がした。


父親が、切り出した。「もう、離婚しかないんじゃないかな。結婚前に、経済的な話をしてくれていたら、こんなことにはならなかったよね。」

やつは言った。「お義父さん、夫婦は助け合うものですよね。あと少しで完済できるんですよ。」

こいつはマジで、初めから、だますつもりだったんだ!私のお金をあてにして、楽になろうとしたんだ!

キモい!キモい!キモい!

私は、耐えられなくなり、離婚届をテーブルに出した。

「名前を書いて!時間の無駄。話す余地もないよね。」


まわりのお客さんが一斉に私達を見た。

さすがに、やつもまわりのお客さんの身を乗り出すような、耳に全身全霊を注いでいるような雰囲気にたじろいだ感じだった。


父親が、母親に他の階で人の少ないテーブル席を探すように頼み、母親が空席を見つけたので私達は、移動することにした。

粗大ゴミ男との話し合い⑤

やつが、私達がやり直すために、いや、やつが勝手にまだ婚姻関係を続けていこうとするために提示したのは、雲をつかむような、ありえない提案だった。まだ、考えてもない、具体案もないバイトをすることだった。

はい、却下!でした。

さえない貧弱オジサンには無理です!っていうか、もう私には離婚しかなかった。


こんな、落ち武者オヤジと、二度と一緒の空間で息をしたくない。


父親があからさまに嫌な感じの態度に出たので、やつは、焦ったようにこう言った。

「あ、私が所有している実家を思いきって売却することも考えます。」

そして、大きくため息をついた。

私は思った。「はぁ~?あんなボロ屋、売れるわけない(笑)」

思っただけで、あまりにやつが哀れで口に出さなかった。


セルフ喫茶店の私達のテーブルのまわりのお客さん達が、めちゃくちゃ聞き耳をたてているのが、すごく面白い光景に映った。


私は、もう、離婚しかないと確信した。