あんなやつにだまされました

数年前、結婚相談所に入会し初めて紹介された人と半年で成婚退会。入籍して3ヶ月弱、同居して2ヶ月弱で離婚。まんまとだまされました。

プロポーズ

結婚相談所からは、結婚の意志をはっきりと伝えるため、プロポーズをする決まりになっている。

やつは、しっかりとめがねちゃんが喜びそうなシチュエーションでプロポーズするようにと仲人さんから言われていたようだ。


このプロポーズについては、成婚退会した時に、どこで、どんなふうにと、根掘り葉掘り聞かれた。

おそらく結婚相談所のホームページや、パンフレットに写真とともにのせるためだ。


さて、やつは夜景のきれいなデートスポットを考えていた。風が吹き寒かった。もう結婚するのはわかっているのだから、前置きなどいらないのに、長かった。長々と話すので途中で本当にものすごく疲れたことを思い出す。

まわりは、楽しそうなカップルであふれていた。

ああ、私の現実はさえない太っちょおじさんなんだな。下を向くたび地頭?地肌が見える。薄い長い髪を上手くやりくりしているが、風が吹けば、落ち武者のようだった。悲しい気持ちにもなった。

でも、これは結婚。生活力がなきゃ。お見合い結婚なんだから。私はやつの扶養に入り、パート勤務に変更して、子供ができたら専業主婦になる。このおじさんに私の人生をかけるのだ。

やつは、細長い目をより細くしてプロポーズしている自分に酔っていた。


長々と続いた話に「はい。」と、あっさり返事したので、やつはグズグズとしばらく文句のような独り言をつぶやいていた。ひと通り文句を言い、落ち着いたのか、「めがねちゃんは、冷たいなぁ。」と、ヘラヘラ言ったので、私は、「こういう性格なので、よろしく。」と言った。


私は、年収、勤務先、仕事の役職など条件でやつを選んだ。逆に条件がなければ、絶対に絶対に結婚したくないさえないおじさん。


プロポーズから数ヶ月後、私は、やつと結婚してしまったのだ。

結婚相談所⑧

仲人さんからは、正式に交際に進むため、両家に交際していることを報告しに行くというミッションが出た。

手土産や、服装など細かな好印象につながるアドバイスを受ける。


結婚して家族になるという正しい進め方を短期間で一つ一つこなしていく。

条件の合う結婚願望のある男女が、結婚するために結婚相談所に入会し、結婚するのだから、そこは、淡々とサクサクとこなしていく。

愛情は、あとから育むのだ。今は、とにかく結婚するための行事をこなしながら、私は結婚するのだ。私は結婚したいのだ。


やつの家族は、地方在住の妹夫婦とその子供達。妹夫婦の住む町のレストランを妹が予約してくれた。


妹夫婦は、本当の兄妹?と、疑うくらいスラリスリムな今どきのカップルだった。

子供達は、挨拶ができ、キチンと育てているのがわかる普通に可愛らしい雰囲気だった。


なんとなくこの時、食事中も、やつがかわいそうに感じた。妹から常にディスられている感じ。

何をしてもダメだった兄という感じ。

私と結婚したら、こんなこと言わせないようにキチンとしなきゃと、思った。かばいたくなった。


妹は、帰り際に私に近づき小声でこう言った。

「あんな人、どこが良かったの?」


ああ、この時、踏み止まれば、こんな時こそ仲人さんに相談しておけば良かった。


しかし、うちの両親への挨拶の日も決まっていたのであとには戻れなかった。

結婚相談所⑦

仲人さんから連絡があり、やつが交際に前向きであることを告げられ、私も異議なしとなり、個人的に連絡開始となった。


すぐにやつから電話があり、なんだか照れくさいような、嬉しいような気持ちになった。

次のデートは、お弁当を持って車で少し遠出することになった。私がお弁当を作ると言うと、ものすごく、オーバーでなく、本当に、ものすごく、ものすごく、感激してくれた。


デート当日、やつの国産高級車は乗り心地は最高で、「いい車ですね。」と褒めると、太っちょさえないおじさんは、「そんなことないですよ。この歳なら当たり前の贅沢とまではいかないけど、、年相応のステイタスみたいな感じかな。」と、誇らしげにタプタプのお腹を揺らして笑った。なんだかその意味はわからなかったが、この車が好きなんだなとわかった。あとになったら、この車を持っている自分が大好きなんだとわかった。


しかしやつは、本当に○歳なのかなと思うくらい老け顔だった。体もタプタプ。服装は信じられないくらいダサかった。また、「もし、結婚したら服装など全部、めがねちゃんの好みに変えてね。僕は服装とかとても疎いから、めがねちゃんの趣味の服装でコーディネートしてほしいな。」と、言った。

さえないおじさんは、ファッションにも無頓着だから、もし結婚したら私に任せて!と、思った。


こうして、仲人さんには連絡はするものの、二人で連絡を取り合うようになった。

やつは、毎日数回のラインを送ってくるようになった。