あんなやつにだまされました

数年前、結婚相談所に入会し初めて紹介された人と半年で成婚退会。入籍して3ヶ月弱、同居して2ヶ月弱で離婚。まんまとだまされました。

地獄の初夜①

結婚相談所の担当仲人Aさんは、こう話した。

「高校生でもなけりゃ、同じクラスで相手と毎日会い、そのうちに好きになったり、毎日同じ道ですれ違うすごくタイプの人に一目惚れするなんて、現実にはなかなかありえないです。タイプと違っても、安定した職業をもち、健康で、収入が条件に合えば会ってみてすごく嫌でなければ、結婚して好きになっていくのです。それがお見合い結婚ですよ。

やつは、持病もなく、安定されてます。良い方ですよ。」


やつの腹のタプタプの脂肪は、ズボンのウエスト部分に大きく乗っかる。同じ姿勢で座っているとくい込むので、時々、ウエスト部分を両手で思いきり上に上げる。その時、腹の脂肪が妙な音をたてる。ウエストのゴムかもしれない。その音が生活のだらしなさを象徴しているかのようだった。なんでこんなに太っちょなんだろう。健康なのか?


手足の半袖くらいのところから出る皮膚は、かさぶたが点々とあり、話しながら体温があがると痒くなり、ボリボリと掻きむしる。「皮膚科に行ってもなかなか治らないんだよ。」と、掻きつづける。血がかさぶたになる。


薄い毛髪は、耳の横の長い髪を上手く調節して工面し、頭頂部は黒い色を塗っていた。


引き笑いをする目元は顔の脂肪で細くツリ目になり、真顔のときはドキリとするくらい冷たい。


私にはこんなさえないおじさんしか結婚相手にならないのかなと思うと悲しかったが、条件が上手く合い、私を扶養に入れ専業主婦にして、これから家族を作ろうとしてくれている。なにより、両親、親戚にあんなにお祝いしてもらったこの結婚。幸せにならなくちゃと思った。

引越しの日、家族らと、レストランで分かれ、二人で「せっかくだから」と、コンビニでビールを買い新居に戻った。

「今日からよろしく。」と乾杯した。そして、やつがこう言った。

「めがねちゃん、僕のこと好きだよね。」

新婚初夜にそう聞かれたら誰でも「うん。」と、こたえるだろう。私が頷くと、「じゃあ。」と言って一枚の紙を出してニコニコと説明を始めた。

「僕ね、年相応に借金があるの。これ見て、弁護士さんに相談して作ったの。すごく返済が大変だったんだけど、カードは作れないし、将来的にもローンがくめないからお家とか建てれないんだよ。でも、そうすることで今は月に10万くらいの返済で済んでるんだ。」


10万!頭の中が真っ白になった。

そして、「二人で返済をがんばろうね!」と、言った。

私は絶句した。


「それからね、もう一つ二人で頑張らないといけないことがあるの。」と、続けた。

「え?まだあるの?」と心が崩れそうになったが、両親の顔が浮かび、「頑張るしかないのか。」と奮い立たせ、続きを聞いた。