入籍
入籍の日は、父が調べて良い日を選んだ。
やつも同意し、やつの本籍のある地方へ提出しに行った。その時、住民票もやつの自己所有物件の実家にしたいと言ったので、私の住民票もそこになった。
「両親がこだわって建てた家なので、いつまでも大切にしたい。」というのが理由だと話し、「毎月一回以上は必ず帰り、一泊している。」と話した。
それを聞いた父は、「固定資産税や、光熱費などの基本料金がもったいないな。」と、言った。しかしやつは、両親が他界し今まで一人で生きてきたのだ。とやかく口出しするのは論外で、そのうち考えて行けばよいかなということに落ち着いた。
入籍した後、その実家を初めて訪れた。
この目で見て驚きを隠せなかった。
こだわりなど全くないいわゆる同じパターンで建てた古家が5軒ならんでいるうちの一軒だった。中に案内され入ると狭い空間に箪笥がごちゃごちゃに置かれており、床は所々で下に沈んだ。「こんなとこに月イチで寝てるんだ!」息をするのも嫌だった。
そしてやつからは、「これでも一人でコツコツ片付けたんだよ。なにせ、父親がゴミ屋敷にしてしまっていたから。」「妹は、帰らないけど帰って来たらスリッパがないと無理だって言うんだよ。へへへ。」と笑った。
私は胸が苦しくなった。
もしかして、こいつ、大うそつきなのか?
こだわりなどない実家。そこに月イチ帰る理由は何なのか?
その答えは、同居の1日目にやつから突きつけられることになる。
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