新婚生活とはこんな地獄の生活なのか？

やつの食欲は異常だった。

同居二日目、夕食に鶏の照り焼き、酢の物、サラダ、刺し身、味噌汁を作った。鶏の照り焼きを一口食べると「こんな、白ごはんが進むおかずを嫌がらせみたいに作りやがって。」と、言われた。やつは、一食で白米を三合食べるのだ。「明日からは、四合炊いて。」と言った。味噌汁は、一杯、二杯は座って飲み、台所で鍋が空になるまで飲んだ。

三日目は、夕食の買い物に一緒に出かけて、私が「ご飯を四合炊いている。」と、言ったのに、「夜は冷やし中華で良いよ。」と、言い始め、中華麺を4つで100円を見つけ、「ほらぁ。具無しで良いよ。八玉湯がいてくれたら良いよ。」言い方が、自分は我慢するみたいな言い方なのだ。そのくせ、しっかり刺し身もカゴに入れ、割高な冷やし中華のタレを一瓶もカゴに入れた。麺売り場にいた中年女性は、やつを冷ややかに見て、気の毒そうに私を見た。

その夜は、冷やし中華を八玉食べ、ご飯を二杯、おかずも食べた。

やつは、夕食を大量に平らげると、お気に入りの抱きまくらを抱き、ゴロリと横になる。

私は洗濯機のスイッチをいれ、片付けを済ませ、明日の朝の食事の準備をし、やつの弁当を作る。そして、出来上がった洗濯物を干す。もう、やることがいっぱいある。洗濯物を干していると、「新婚のスキンシップは～？」と言うので、「まだまだ片付いてないよ。」と、返すと「めがねちゃんは冷たいなぁ。」と言いながら、じっと干している私をみている。

ただ、じっと見ている。

「何？」と、聞くと、「かわいい奥さんを見てるよ。」と、手伝いもせず、見ている。

そして、「ねぇ、コンビニでアイスクリーム買ってあげるよ。」と、言う。いやいや、食べたいのはあんたでしょ！

私が行くと言うまで、そう、自分の思いが通るまで言い続ける。

しぶしぶ行くと、自分が食べたい高カロリーのアイスクリームを３０００円位買って上機嫌になる。帰宅し、２つ程食べた。

満足すると、病院から処方されている薬を飲む。５分後たかいびきが始まる。睡眠薬なのですぐにいびきが始まる。

そして、真夜中に薬の副作用なのか、せん妄が起きる。

私は、話しかけられる。「ねぇ、赤ちゃんできるかな？僕達の赤ちゃん。」と、繰り返す。「どうかなぁ。」などと、返事をしないといけない。「みーちゃん（かつて飼っていた猫の名）、こっちおいでよ。はやく！みーちゃん！」などと、やつは寝ているが、こちらは、通常の声量で話しかけられ眠れない。

そして、すくっと立ち上がり台所に行き、食パンを２枚手にして布団に戻りむしゃむしゃと食べ散らかす。

翌朝、「僕、いびきかいてた？」と、聞くので、「うん。」と、こたえると、「かいてたかぁ。凹むなぁ。かいてたの？凹むなぁ。」と、まるで、私が悪いみたいい言うのだ。それが嫌で無視すると、「かいてた？凹むなぁ。」と、どんどん私を悪者にして、ずっと言い続ける。私に「誰もいびきかくよ。」と、言わせ、せん妄など一ミリも話せなくするのだ。

私は、やつの食欲を満たすために、ボリュームのある育ち盛りの高校球児みたいな食事作りと買い物で頭はいっぱいになり、夜は睡眠不足になって常にイライラしていった。私は食べれず、眠れず、やつれていった。

そして、まだ通帳もキャッシュカードも渡されてないので私の貯金を切り崩して買い物していた。

一週間後、「生活費を渡して下さい。」と言った。やつは、「通帳はウェブ通帳なので僕が確認するからね。」と話し、私に、給与振込口座のキャッシュカードを渡した。

私は、残高照会で生活費のやりくりを考えることになった。

そして、新たな地獄が始まった。